Happy life with IPv6

去る 3/25 から 3/30 にフランス・パリで第 83 回 IETF ミーティング(以下IETF83)が開催されました。IETFにはIPv6の運用技術を取り扱う「v6ops(IPv6 Operations)」というワーキンググループがあります。v6opsワーキンググループはプロトコルの標準化ではなく、すでに標準化が完了している ものも含めたIPv4とIPv6の共存技術や移行技術の運用指針を確立することを目的として活動しています。IPv4とIPv6が共存する環境での様々な 注意点、はまりどころなどを記したRFCがv6opsワーキンググループから多数発行されています。

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さて、今回このv6opsワーキンググループに日本のWIDEプロジェクトからIPv6環境での生活実験のレポート(注1)が提出されました。近い将来、オフィスや家庭のインターネット接続がIPv6のみになり、IPv4インターネットにはIPv6インターネット上でトンネル技術や変換技術を利用してアクセスしなければならない環境になるとユーザはどんな問題に直面するだろうか?という実験です。SEILチームは、この実験にIPv6インターネット経由でIPv4インターネットにアクセスするための「4rd(注2)」というプロトコルの実装を提供することで協力しました。

SEILチームではIPv4アドレスの枯渇対策の一つとして4rdの研究開発を継続しておこなっています。前回のIETF82でもWIDEプロジェクトと協力して実証実験をおこないレポート(注3)しましたが、IETF83のレポートではより実験の範囲を広げています。4rd以外の移行技術のテストや、ゲームの動作試験もおこないました。家庭でのIPv6の利用に際してはゲームを初めとするエンターテイメントソフトがちゃんと動くのかということが気になる方も多いと思いますが、既存のゲームが遊べなくなるような致命的な問題の多くは回避できそうです。ゲームソフトの開発者から挙動をいくつか改善して欲しいという要望を受けましたが、技術的にはさほど困難な課題ではなく解決可能です。ソフトによっては特殊な処理をしていて、どうしても対処しきれないものもあると考えられますが、少しでも問題を少なくすべく研究開発を進めています。

新しい技術を利用して生活すると様々な問題が出てくるものですが、早期に実験をおこない技術の特徴や問題点を広く共有することで、一般ユーザが遭遇するであろう問題を事前に発見・解消できる可能性が高くなります。インターネットにおける技術開発では、単にRFCに準拠した製品を作るというだけではなく、積極的に情報を公開してより多くの人の視点で技術を確かめることも大切な仕事の一つです。

注1 レポートはインターネットドラフトとして提出されており、以下から参照できます。http://tools.ietf.org/html/draft-hazeyama-widecamp-ipv6-only-experience-01

注2 4rd は現在 IETF のsoftwire ワーキンググループで標準化作業がおこなわれています。softwire ワーキンググループに提案されているIPv4/IPv6移行技術を簡単にまとめてIIR(Internet Infrastructure Reveiew)でご紹介しています。

注3 IETF82での報告は、IETF83で提出したインターネットドラフトの00版になります。http://tools.ietf.org/html/draft-hazeyama-widecamp-ipv6-only-experience-00

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